第9号:収穫の秋のはずが...季節を読み違えた菜園から学ぶ「前提を疑う力」
計画と現実のギャップが教えてくれる、本当に大切なこと
前回から:AI協創の初期発見から、再び菜園へ
前回は、AI協創1ヶ月目の体験から「問いを立てる力」の重要性についてお話ししました。今回は再び菜園に戻ります。11月下旬、本来なら「収穫の秋」を語るはずでしたが、現実はまったく違いました。その「予定通りにいかない現実」から見えてきた、大切な学びをお届けします。
プロローグ:「収穫の秋」という思い込み
11月上旬。本来なら収穫の喜びを語る予定でした。9月に植えた秋野菜たちが順調に育ち、ダイコン、ブロッコリー、カリフラワーが収穫を迎える...そんな原稿を構想していました。
しかし、菜園に向かった朝、現実はまったく違いました。朝晩はだいぶ肌寒くなり、秋らしい涼しさです。そして、収穫を期待していた野菜たちは、ダイコンはまだ細く、ブロッコリーは蕾がようやく見え始めた程度。カリフラワーに至っては、まだ葉が育っている段階です。
「こんなはずじゃなかった」
でも、この「予定通りにいかない現実」こそが、今回最も大切な学びになったのです。
3つの野菜が教えてくれたこと
さつまいも:期待と現実の大きなギャップ
今年、意気込んで100株も植えました。一昨年の豊作の記憶と、昨年の猪被害の悔しさから、「今年こそは!」という想いでした。
10月下旬の収穫。期待に胸を膨らませてスコップを手に畑へ。しかし、1株あたり多くても3〜4個、しかもサイズは一昨年の半分ほど。後で分かったのは、記録的な夏の水不足の影響でした。週2時間の菜園では毎日の水やりは不可能。今年の夏の厳しさは、さつまいもたちには過酷すぎました。
小ぶりでも味は悪くありませんでした。一昨年は豊作、昨年は猪、今年は水不足。毎年、同じ条件にはならない。これが、自然との協進化の現実なのだと、改めて思い知らされました。
ダイコン:諦めない粘りが生んだ小さな成功
9月上旬。栽培の本にもネットにも「適期」と書いてあります。準備万端で種を蒔きました。数日後、小さな芽が顔を出しました。「今年は順調だ」そう思いました。
しかし、記録的な残暑が続き、発芽した芽が暑さでしおれ、枯れていきました。「まだ早かったのか」翌週、また種を蒔きました。でも、結果は同じ。「情報通りにやっているのに、なぜ」。
それでも、私は蒔き続けました。週末ごとに、枯れた場所に新しい種を蒔く。また枯れる。また蒔く。周りは「今年は難しいね」と諦め顔でしたが、種は安いし、作業も大したことはありません。ダメ元でも、蒔き続けよう。
そして9月下旬。気温が下がり、ようやく発芽した芽が育ち始めました。今、順調に育っています。12月には収穫できるでしょう。諦めずに続けたことが、報われたのです。
ブロッコリー・カリフラワー:予定は未定、それでも待つ
「11月収穫予定」のはずでしたが、11月下旬の今もまだ成長途中です。ブロッコリーは小さな蕾が見え始め、カリフラワーはまだ葉が育っている段階。収穫は12月後半か、1月になるかもしれません。
以前なら「まだか、まだか」とイライラしていたかもしれません。でも、3年間の菜園体験で学びました。焦っても、野菜は早く育たない。むしろ、待つことを楽しむ方が、精神的に健康的です。
毎週末、少しずつ成長する姿を見る。その小さな変化を楽しむ余裕が、最近は出てきました。
「前提」が崩れる時
前提1:「例年通り」という思い込み
一昨年、さつまいもは大豊作でした。だから、同じように育てれば、今年も豊作になるはず。これが私の前提でした。でも、今年の夏は記録的な暑さと少雨。気候が違えば、結果も違います。
栽培の本の「9月上旬がダイコンの適期」も、例年の気候を前提にしています。でも今年は、9月に入っても真夏のような暑さ。前提が崩れれば、情報も役に立ちません。
教訓:「例年通り」「マニュアル通り」という前提を、常に疑う必要がある。
前提2:「計画通りにいくはず」という期待
春に立てた栽培計画では、11月は収穫の最盛期のはずでした。でも現実は違いました。成長が遅れ、収穫は12月以降にずれ込みました。
計画は、あくまで予測です。現実が計画に合わせてくれるわけではありません。むしろ、現実を見て、計画を修正する柔軟性が必要です。
教訓:計画に固執せず、現実に応じて柔軟に対応する。
前提3:「頑張れば何とかなる」という自信
100株も植えれば、絶対に豊作になる。そう信じていました。でも、水不足という環境要因の前では、努力だけでは限界がありました。週2時間の菜園では、毎日の水やりは不可能。自分の限界を認め、できる範囲で最善を尽くすしかありません。
教訓:自分の努力だけでコントロールできないことがある。それを認めることも大切。
企業でも同じことが起きている
40年間の企業生活で、何度も「前提の崩壊」を経験してきました。
営業時代、「この商品は売れるはず」という前提で活動したら、顧客ニーズが想定と全く違いました。システム企画時代、「標準化すれば効率が上がるはず」という前提で導入したら、現場から猛反発。標準化で失われる柔軟性が、実は重要な価値だったのです。
前提が崩れる時、多くの人は抵抗します。「前提が間違っているはずがない」「もっと頑張れば、前提通りにできるはず」。でも、前提を疑い、現実を受け入れ、柔軟に対応した人や組織が、結果的に成功しています。
AI時代にこそ必要な「前提を疑う力」
AI挑戦で疑った前提
第8号で書きましたが、私のAI挑戦も「前提を疑う」ことから始まりました。
前提1: 59歳からAIは無理 → 疑った結果、1ヶ月でWebサイトを公開できた
前提2: 非エンジニアには開発は無理 → 世界標準ツール×AI×人間の協働で可能だと分かった
前提3: 世界標準ツールは難しすぎる → Visual Studio CodeやGitも使えるようになった
もし、これらの前提を疑わなければ、私は何も始めていなかったでしょう。前提を疑ったから、新しい可能性が開けました。
AIが教えてくれた視点
AIとの対話で面白いのは、AIが時々、私の前提を疑ってくれることです。
「協進化プラットフォームは定年前後の人向けだから、シンプルなデザインにしたい」と言ったら、AIは「定年前後の方々も日常的にスマホやネットを使っていますよね。必要なのは『シンプル』より、『直感的で目的が明確なデザイン』では」と返してきました。
はっとしました。私は「高齢者=ITが苦手」という固定観念を持っていたのです。AIとの対話は、自分の前提を疑う良い機会になります。
失敗から学ぶ3つの教訓
教訓1: 「情報」を鵜呑みにしない - 文脈を理解する
「9月上旬がダイコンの適期」という情報は、間違っていません。でも、「今年の9月上旬」には当てはまりませんでした。情報には、必ず「文脈」があります。どんな地域で、どんな気候で、どんな条件で有効なのか。
40年の企業経験で培った「文脈理解力」。これが、AI時代において最も価値のある能力の一つです。AIは膨大な情報を提供してくれますが、その情報が「今、ここ」で有効かどうかを判断するのは、人間の役割です。
教訓2: 諦めずに「やり続ける」 - 粘り強さの価値
ダイコンの種を、何度も蒔き直しました。合理的には「今年は諦める」という判断もあったでしょう。でも、「種は安いし、作業も大した手間ではない。ダメ元でも、可能性がゼロでなければ、やってみる価値がある」。
粘り強く続けたことが、報われました。ただし、「闇雲に続ける」のとは違います。毎回、少しずつ工夫していました。蒔く場所を変えたり、水やりのタイミングを調整したり。「粘り強さ」とは、失敗から学びながら、少しずつ改善して、継続すること。これは、まさに協進化のプロセスです。
教訓3: 「期待値」を柔軟に調整する - 別の価値を見出す
さつまいも100株。収穫は期待外れでしたが、小ぶりながらも甘みがあり、食感も良い。小ぶりだからこそ、火の通りが良く、料理しやすいという利点もあります。
期待と現実のギャップは、失望の源泉でもありますが、新しい発見の源泉でもあります。大切なのは、「期待通りにならなければ失敗」と決めつけず、「得られた結果から、どんな価値を見出せるか」という柔軟な思考です。ビジネス用語で言えば、「ピボット」。菜園が教えてくれたのは、この柔軟性の大切さでした。
待つことの価値
予測不可能性を楽しむ
AI技術の進化は、予測困難です。半年前、私はWebサイトを自分で作れるとは思っていませんでした。では、半年後、1年後、私は何ができるようになっているでしょうか。正直、分かりません。
でも、それが面白いのです。完璧な計画など立てられません。予測不可能だから不安でしょうか。確かに不安もあります。でも、それ以上にワクワクします。「次は何ができるようになるんだろう」「どんな協進化が生まれるんだろう」。
この期待感が、59歳の私を前に進ませてくれます。予測不可能性を、脅威ではなく、機会として捉える。計画通りにいかないことを、失敗ではなく、冒険として楽しむ。これが、AI時代を生き抜く秘訣かもしれません。
なぜ続けるのか - 保証のない挑戦
菜園には何の保証もありません。来年も水不足や猪が来るかもしれません。それでも、春になったら、また種を蒔きます。なぜでしょうか。
豊作の保証はないけれど、可能性はある。失敗しても、学びがある。予想外を含めて楽しい。自然との協進化そのものが、価値です。収穫は結果の一つであって、すべてではありません。
これは、企業での挑戦も、AI挑戦も、人生そのものも、同じではないでしょうか。保証がないからこそ、面白い。予測できないからこそ、ワクワクする。この不確実性の中で、前に進み続けること。それが、生きるということではないでしょうか。
まとめ:前提を疑い、現実を受け入れ、それでも挑戦する
今回の菜園が教えてくれた5つのこと
1. 前提を疑う - 「こうなるはず」という思い込みを、常に疑う。過去の経験も専門家の情報も、今年・今回には当てはまらないかもしれない。
2. 現実を受け入れる - 思い通りにならないことを、素直に受け入れる。現実を起点に、次を考える。
3. 柔軟に対応する - 計画に固執せず、状況に応じて調整する。粘り強く継続しながら、少しずつ改善する。
4. 失敗を楽しむ - 予想外を、学びの機会と捉える。計画通りにいかないことも、冒険の一部として楽しむ。
5. それでも挑戦する - 保証はなくても、可能性があるなら挑戦する。失敗を恐れず、また種を蒔く勇気を持つ。
これこそが協進化
一方的に自然を管理しようとしても、うまくいきません。自然の声を聞き、自然の都合を理解し、自然に合わせて自分も変わる。その相互作用の中で、共に進化する。これが、協進化の本質です。
そして、これはAI時代の働き方にも通じます。AIを一方的に「使う」のではなく、AIと「協働する」。企業と個人の関係も、世代間の関係も同じです。
完璧な計画より、適応力。前提に縛られるより、現実を見る目。保証を求めるより、可能性に賭ける勇気。
これが、予測不可能な時代を生き抜く秘訣です。
エピローグ:12月の収穫を楽しみに
収穫の喜びを語るはずだった第9号は、「収穫を待つ」話になりました。でも、これでいいのだと思います。計画通りにいかないこと。予想外が起きること。それを受け入れ、学び、適応すること。これが、協進化の本質です。
12月、ダイコンが収穫できた時、きっと喜びはひとしおでしょう。この待った時間、何度も失敗した経験、すべてを含めて、価値があります。
予定通りにいかない人生を、楽しみましょう。
そして、保証のない挑戦を、恐れずに続けましょう。菜園も、AI挑戦も、そして人生も。すべては、「前提を疑い、現実を受け入れ、それでも挑戦し続ける」協進化の旅です。
次回予告:40年前の決断を振り返る
次回は、私自身の人生の大きな前提について振り返ります。40年前、なぜこの会社を選んだのか。「スキルマッチング」ではなく「人」で選んだ決断。それは正しかったのか。
転職が当たり前の現代、ジョブ型雇用が主流の今、あえて「長期雇用」の価値を問い直します。現代の若者への問いかけと共に、仕事選び、人生選びについて考えます。
読者の皆さんへの問いかけ
あなたが持っている「前提」は何ですか?「こうなるはず」「これが正しい」「去年と同じでいい」...その前提、本当に正しいですか?現実を見て、疑ってみる価値はありませんか?
そして、予定通りにいかなかった時、あなたはどう対応しますか?失敗や予想外を、どう受け止めますか?そこから、何を学んでいますか?保証のない挑戦を、どう楽しんでいますか?
ぜひ、あなたの体験を聞かせてください。一人ひとりの「予定通りにいかなかった」ストーリーが、このコミュニティを豊かにしてくれます。
時代進
🌱 収穫はまだですが、学びは豊作です
🤔 前提を疑い、現実を受け入れる勇気を
🌾 12月の収穫を、一緒に楽しみに待ちましょう


