第3号 夏野菜の爆発的成長に学ぶ「スケールの罠」〜トマトとナスが教えてくれた成長管理の極意
急成長する組織をどうコントロールするか
前回から:効率化で失われる「余白」を考えて
前回は、ジョブ型雇用の普及で失われつつある「新しい仕事をつくりだす力」について、協進化の視点からお話ししました。読者の皆さんから「確かに職務記述書の隙間にこそ価値がある」「余白の大切さを改めて感じた」といったご感想をいただき、この問題への関心の高さを実感しています。
さて今回は、企業論から一転して菜園に戻ります。「またトマトの話から企業論かよ」と思われるかもしれません(笑)。確かに多少強引な類推かもしれませんが、協進化の視点で見ると、菜園で起きる出来事が企業経営とあまりにも似ているので、つい考えてしまうのです。お付き合いください。
7月下旬の菜園:予想を超えた成長の勢い
梅雨が明けた7月下旬、菜園は一変していました。
5月に植えた時には手のひらサイズだったトマトの苗が、今や私の背丈を超える勢い。ナスも枝を四方八方に伸ばし、隣の区画にまで侵入しそうな状況です。キュウリに至っては、支柱を完全に追い越して、もはや収拾がつかない状態になっています。
「成長って、こんなに大変なものだったのか」
初心者の私は、野菜の成長力を完全に甘く見ていました。
トマトの支柱問題:成長に追いつかない支援体制
最初に設置した支柱は1.5メートル。「これで十分だろう」と思っていたのですが、トマトはあっという間にそれを超えてしまいました。
慌てて2メートルの支柱に交換。しかし、今度は支柱の本数が足りません。主茎だけでなく、脇芽からも次々と新しい茎が伸び、それぞれに支えが必要になったのです。
「これって、急成長する企業の組織問題そのものじゃないか」
スタートアップ企業でよく見る光景が頭に浮かびました。最初は少数精鋭で回していたチームが、事業拡大とともに人数が増え、既存の管理体制では追いつかなくなる。マネージャーが不足し、コミュニケーションラインが複雑化し、統制が効かなくなる。
トマトの支柱不足は、まさに「管理スパンの限界」を物語っていました。
ナスの剪定:選択と集中の重要性
一方、ナスは別の問題を抱えていました。
成長は旺盛なのですが、葉が茂りすぎて実が見えません。調べてみると、ナスは「剪定」が重要で、不要な葉や枝を切り落とさないと、栄養が分散して良い実がならないとのこと。
実際に剪定を始めてみると、これが意外に難しい。どの枝を残し、どれを切るか。一見、どれも必要に見えるのです。
「でも、全部を育てようとしたら、結局どれも中途半端になってしまう」
これもまた、企業経営でよく見る課題でした。事業が拡大すると、あれもこれもと手を広げたくなる。でも、リソースは有限。全てに投資していては、どの事業も競争力を持てなくなる。
ナスの剪定は、「選択と集中」の大切さを教えてくれていました。
キュウリの暴走:制御不能な成長の末路
最も深刻だったのはキュウリです。
成長があまりに早く、支柱を設置する前に蔓が伸び放題になってしまいました。地面を這い、隣の区画に侵入し、他の野菜に絡みつく始末。
収穫は確かにできるのですが、どこに実がなっているか分からず、探すのに一苦労。しかも、地面に接した実は品質が悪く、商品価値がありません。
「これは『成長のための成長』になってしまった失敗例だな」
制御されない成長は、かえって価値を毀損してしまう。売上は伸びているけれど利益が出ない、組織は拡大しているけれど生産性が下がっている。そんな企業の姿がキュウリの暴走に重なりました。
スケールの罠:成長が生む新たな課題
菜園での体験を通じて、「スケールの罠」というものを実感しました。
成長すること自体は良いことなのですが、成長には必ず新たな課題が伴います。小さな時には問題にならなかったことが、規模が大きくなると重大な問題となる。
菜園で見えたスケールの罠:
支柱の不足(管理体制の限界)
栄養の分散(リソース配分の最適化問題)
制御の困難(ガバナンスの複雑化)
品質の低下(規模と質のトレードオフ)
これらは、企業が成長期に直面する課題と驚くほど似ています。
協進化の視点で見る成長管理
では、どうすれば健全な成長を維持できるのでしょうか。
菜園での失敗と修正を通じて見えてきたのは、成長と管理の協進化の重要性でした。
1. 先回りの準備
トマトの支柱問題から学んだのは、成長を見越した準備の重要性です。
「今はまだ大丈夫」ではなく、「2ヶ月後にはどうなるか」を考えて対策を打つ。企業でいえば、現在の組織規模ではなく、将来の組織規模を見越した管理体制の構築です。
2. 定期的な見直し
ナスの剪定から学んだのは、定期的な見直しの必要性です。
一度決めた戦略や組織体制も、成長とともに最適解が変わります。「今までうまくいっていたから」ではなく、現在の状況に最適な形に継続的にアップデートしていく。
3. 成長の質にこだわる
キュウリの暴走から学んだのは、量的成長だけでは意味がないということです。
売上や組織規模の拡大だけを追うのではなく、その成長が本当に価値を生み出しているか。持続可能で質の高い成長になっているかを常にチェックする必要があります。
8月に向けて:持続可能な成長のために
現在、菜園では「第二ラウンド」の準備を進めています。
トマトには追加の支柱を設置し、ナスは思い切った剪定を実行し、キュウリは支柱をしっかり立て直しました。痛い経験でしたが、この学びがあったからこそ、8月以降はより質の高い収穫が期待できそうです。
企業も同じです。成長期の混乱は避けられませんが、その混乱から学び、より良い管理体制を構築していく。成長と管理が互いに影響し合いながら、共により良い状態になっていく。
これこそが、成長における「協進化」なのではないでしょうか。
次回予告:人の成長管理を考える
野菜の成長管理から組織の成長管理を考えてきましたが、次回は「人の成長管理」について、社労士としての専門知識と実務経験を交えてお話しします。
20代で社労士資格を目指した理由から、現在の雇用環境への危機感まで。「人こそが企業の最大の資源」という信念を40年間持ち続けてきた想いをお伝えします。
野菜も人も、適切な支援と環境があってこそ、その持てる力を最大限に発揮できるのです。
読者の皆さんへの問いかけ
あなたの職場や事業で「スケールの罠」を感じた経験はありますか?成長期にどんな課題に直面し、どのように乗り越えましたか?成功例も失敗例も、ぜひお聞かせください。
時代進


